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Simplex Insight

DX時代に適切な基幹システムを。SBI損保の事例にみる基幹システムリプレースの勘所

SBI損害保険株式会社様

刻一刻と変わる社会情勢や、多様化・複雑化するリスクに対応するため、DX推進や新技術による変革を強力に進めているSBI損害保険株式会社(以下、SBI損保)様。このたび、個人保険向け基幹システムの刷新を決定し、シンプレクスが提供する「Simplex xInsurance」(シンプレクス クロスインシュランス)を導入されました。なぜシンプレクスを採用したのか?、プロジェクト遂行のカギは?、「新しい時代に、新しい保険を」提供するSBI損保様の次なる一手は? SBI損保代表取締役社長の五十嵐正明様、情報システム部部長の齋藤敏貴様とシンプレクスとの対談を通じて、DX時代における基幹システムリプレースの勘所を探ります。

対談メンバー

SBI損害保険株式会社
代表取締役社長 五十嵐 正明様
情報システム部 部長 齋藤 敏貴様
シンプレクス株式会社
SBI保険グループ アカウントマネージャー 鏡 義弘
保険事業責任者 近藤 雅俊

収入保険料前年比17%増。原動力はDXへの取り組み

近藤

近年の社会情勢やビジネス環境の変化に対し、SBI損保様の事業はどのように推移されていますか?

五十嵐氏

当社は、SBIグループの保険部門を担う「SBIインシュアランスグループ」の1社で、主に自動車保険のダイレクト販売を行っています。2008年の開業以来、保有契約数が113万件、2020年度の収入保険料は457億円を超えました。特に2019年度の収入保険料は390億円弱で、前年比17%の増収となるなど、業績は順調に推移しています。
背景には、グループシナジーを用いた積極的なテクノロジーの導入や、地方創生戦略に沿った地域金融機関との提携、ユニークなマーケティング&広報戦略などの理由があげられますが、最も大きな原動力となったのは、全社的に推進しているDXの取り組みです。

近藤

齋藤様がご担当されるシステム開発の現場では、こうした事業推移に対してどのような対応をされていますか?

齋藤氏

SBIグループは、「顧客中心主義」の徹底という基本方針のもと、グループシナジーを追求しているため、新たなビジネスが日常的に立ち上がります。ビジネス拡大に伴うシステム対応や、五十嵐があげたような全社的なDX推進を、柔軟かつスピーディにこなすことを、現場は日々意識して業務を行っています。

近藤

なるほど、好調な業績を支えるためには、現場レベルでDXを意識することが不可欠なのですね。

テーマ01:DX時代とは 「プライスリーダーからゲームチェンジャーへ」をスローガンにDXに取り組む

近藤

では、DX時代に、損保業界が求められているのは、どのようなこととお考えでしょうか?

五十嵐氏

DX時代に損保業界が求められていることは、多岐にわたります。社会を取り巻く状況とリスクは、多様化・複雑化が加速しており、保守的とされていた損保業界も、変革に向けたチャレンジが必要です。テクノロジーが進歩する社会で、保険会社としてのCSRはもちろん、損保の収支に直接影響を与える頻発する自然災害、新型コロナウィルス感染症を契機とするニューノーマルへの対応、人口減少やサイバー攻撃などへの新たなリスクに、損保会社としてどう向き合うかが問われています。社会の変化にあわせて、損保会社もクイックに自らを変革していくことは必須であり、それがビジネスチャンスにもなります。


損害保険会社を取り巻く状況とリスク

近藤

時代のニーズに対し、クイックに自らを変革することが新たなビジネスチャンスを生む、というお考えですね。具体的にはどのように進められていますか?

五十嵐氏

SBI損保では、これまで保険契約担当や事故対応担当を中心とした個別組織で、お客様に対するソリューション提供を行っていました。この縦割りの組織によるサービス提供から、全社的に多様な顧客体験を提供する体制へ変革しようとしています。
とはいえ旧態依然の考えでは変革は難しく、社員の意識改革を促すために、「プライスリーダーからゲームチェンジャーへ」という新たなコーポレートスローガンを制定しました。これまでは価格競争力を武器に成長してきましたが、今後は新たなテクノロジーの導入で、自分たちも業界も変えていく。我々が目指すべきDXに向かっての挑戦がはじまっています。


縦割り組織によるサービスから、DXによる全社的包括的なトータルサービスへ

五十嵐氏

その礎となるのが、基幹システムの再構築です。DX推進には、ビジネス上の課題や要望に迅速に対応できるよう、基幹システムの拡張性が必要でしたが、基幹システムの移行には多額の投資が必要なこともあり、慎重だったのです。
こうした中、2019年から新規に立ち上げた団体保険ビジネスで、シンプレクスと組み新システムを稼働させました。この時の経験や、システム構築・運用能力、将来的なDX施策にも理解があるシンプレクスをビジネスパートナーとすれば、我々がやりたいことができると確信を得たため、基幹システムをリプレースするプロジェクト(以下、本プロジェクト)が発足しました。
具体的には、オンプレミスで稼働中の基幹システムをクラウド環境に移行する対応です。2021年7月に個人がん保険システムのリプレースが完了し、現在は火災保険システムのリプレース作業が進行中で、2022年上期には完了予定です。

テーマ02 基幹システム移行プロジェクトの勘所

移行前に抱えていた大きな課題

近藤

本プロジェクトの発足時、プロジェクトの責任者である齋藤様は、当時の課題をどのようにとらえていらっしゃいましたか?

齋藤氏

目指すべき理想の姿に対して、当時いくつか課題を感じていました。一つ目の課題は、パッケージシステムの制約です。システムに変更を加える際、パッケージの標準機能で対応できることには限りがあったため、カスタマイズに多くの費用と時間がかかり、開発生産性が悪い状態でした。

二つ目の課題は、インフラベンダー、アプリベンダー等関係者の調整です。オンプレミスで運用していたため、改修時には関係者の調整に非常に時間がかかりました。一例をあげると、バッチの処理時間が年々長くなり、システムの処理性能を上げたいという課題に対し、これはインフラ側でシステムを増強すべきか、SQLのチューニングなどアプリ側が対応すべきかの調整が必要で、検討・実行・解決までのプロセスに多大な時間がかかります。

三つ目の課題は、リソース不足です。当社では、限られた人員でシステム運営をしています。日々の保守開発案件をこなしながら、稼働中の他のプロジェクトにも対応しなければならず、しかも最新技術も常にキャッチアップする必要があります。システム担当者の負荷は常に高く、効率的な運営ができる仕組みは必須でした。

四つ目の課題は、移行リスクです。パッケージシステムには不明なデータ構造が多く、さらには移行作業のノウハウもなかったため、システムの移行は難易度が高いと感じていました。

課題解決に向けたシンプレクスのアプローチ

近藤

これらの課題に対し、シンプレクスはどのようなアプローチを提案したのでしょうか?

プロジェクトを成功させるためには、将来のビジョンに対する認識を合わせることが非常に重要です。本プロジェクトでは、「ビジネス変革に追従できるシステムと体制の構築」が最重要課題であるという、共通認識が持てました。またプロジェクト開始後は、移行というプロジェクトリスクをどう低減させるかに注力しました。


「目指すべき姿」の認識を合わせ、課題にアプローチ

ベースはビジネス変革に追従できる拡張性の高いシステムとハイブリッド人材での体制組成

近藤

ビジネス変革に追従できるシステム・体制について具体的に教えてください。

まず体制面についてお話します。基幹システムリプレースでは、既存・現行システム両方のアプリ・インフラを把握し、業務に精通することはもちろん、業務・システム・データといった様々な移行観点をもってプロジェクトを推進することが求められます。弊社では、移行系プロジェクトは高難易度プロジェクトとして捉えており、必ずハイブリッド人材を多くアサインします。本プロジェクトでも同様に、複数のハイブリッド人材をアサインしました。ただし、こうした人材は一般的には多く存在しないものです。
我々がハイブリッド人材を多くアサインできるのは、Simplexのビジネスモデル(Simplex Way)に起因します。IT業界ではコンサル、SIer、下請け会社がそれぞれの工程を担当して、プロジェクトを推進することが多いものですが、Simplexでは一気通貫での推進に徹底してこだわっています。その結果、業務でいうと規程や約款の内容を含めた幅広い業務オペレーションナレッジ、システムでいうとアプリ・クラウドインフラなどの領域に関係のないシステム構築ノウハウが、社内に蓄積されています。このようなナレッジやノウハウを利用した人材教育を行い、プロジェクトでの実地経験を重ねることで、多くのハイブリッド人材が育っています。


多くのハイブリッド人材育成するビジネスモデル(Simplex Way)

システム面についてお話すると、機能単位でサービスとして切り出し、複数業務において同一ロジックで実装している機能を、共通サービスとして利用可能にしています。これにより、拡張性の高い、マイクロサービス型の次世代保険システムの提供を実現しています。商品追加や機能変更にも、原則として、マスタ設定の追加や変更など、最小限の開発で対応することができます。
また、DX時代には、ひとつのシステムで業務が完結することはあり得ません。インフラ面ではAmazon Web Service(以下、AWS)のAI系サービスなど外部会社との接続ポイントをつくり、迅速に利用できる仕組みにしています。
今までの保険会社様が抱えていたシステム課題を、他の金融業界で培ったノウハウを活かしながら解決したソリューション・ライブラリを保持しており、固定観念なくフレキシブルに動けることが当社の強みです。

近藤

ビジネス変革に追従できるシステム・体制についてお話しいただきありがとうございます。ただ理想論に見えますが、実際はどうでしたか?(笑)

齋藤氏

一見すると理想論のようですが、私は当時「実現可能性は高い」と思いました。それは団体保険ビジネスでの実績から、システム拡張性やプロジェクト運営を含めた体制面に信頼があったからです。
過去の団体保険ビジネス開始時の話ですが、団体向けがん保険は、当初個人向けがんのパッケージシステムに追加するつもりでした。しかし商品追加の対応難度が想定以上に高く、実現可能性に懸念がありました。検討の末、拡張性を備えたシステム提案をいただいたシンプレクスに、団体がんのシステム開発を依頼したのです。
完成した「団体保険システム」には、現在までに団体向けがん以外の商品も低コスト・短納期で多数追加することができています。


拡張性を意識した次世代型システム

難易度の高いデータ移行、カギは現新比較(新旧システムの本番同等環境での検証)の徹底

近藤

一般的にシステムのリプレースはデータ移行が必要で、難易度が高いものとされています。リスク低減に注力されたとのことですが、実際、移行はかなり大変だったのではと思います。気をつけていたポイントや、それでも難しいと感じたポイントがあれば伺いたいです。

齋藤氏

システム開発の工程ごとに、社内外の業務上考え得るリスクを洗い出して、常にシンプレクスと共有し、話し合いを重ねました。特に気にしたのは、システムの最終アウトプット(メール・帳票・仕訳データなど)に対する移行の現新比較です。既存システムの稼働環境と、本番の移行データ・ツールを用いた新環境とを、同コンディションでテストする工程に力をいれました。これにより、早い段階で移行ツールや想定外データ、アプリケーションのバッチの不具合などが検知できました。

環境準備が大変なので、業務オペレーションや機能の確認はたいてい移行リハなどで済ませがちですが、現新比較はとても重要です。実際に、セキュリティ面の整備などの環境準備は大変でしたが、本番だけで行われるオペレーションなど、机上ではわからなかったことにも気付けました。

齋藤氏

データ移行では、過去にメンテナンスしたデータや、イレギュラーな業務オペレーションによって発生したデータの見極めも大切です。データ移行は、業務部門が大きくかかわるため、当社の業務担当、システム担当、シンプレクスで、As-Is/To-Beの方針整理を丁寧に行いました。

また、本プロジェクトは、シンプレクスのノウハウに裏打ちされた型に従い、商品、業務、システム、データ等の各観点での調査と検証で課題をあぶり出しながら、必要なメンバーを巻き込み解決するフローをまわしていきました。これも、移行ノウハウの一つだと考えています。

テーマ03 SBI損保、シンプレクスの今後の挑戦

近藤

今後の挑戦について、それぞれお聞かせください。

五十嵐氏

SBI損保が目指す、「新しい時代に、新しい保険を」提供するゲームチェンジャーへの変革の実現に向けて、「DX Force 2021」という全社横断のプロジェクトチームを立ち上げ、全社員でDXに取り組んでいます。システムも目指すところは同じです。過去のシステム更改やアプリの開発は、主に保険サービスの向上に寄与するものでした。DXを推進する体制を整えた今年度は、分散するデータの集約とシステムのクラウド化を推進し、変革に対応できる拡張性・柔軟性の高い基盤を構築しました。2022年以降、全社的なデータ活用を進められるデータ基盤を整備し、さらにDXへの取り組みを加速させ、新たな価値、顧客体験を提供できるゲームチェンジャーを目指していく所存です。


SBI損保の今後の挑戦

withコロナを踏まえ、金融機関は今までの事業の見直しをはじめました。銀行による、AIサービスを活用した窓口の無人化の検討もその一つです。DX時代を迎え、多様な顧客体験を提供しようと試みる事業会社様に価値を提供し続けるには、我々システムベンダーにもシステム、サービス、人が持つノウハウの多様化が求められています。今後、多様化の流れについていけないベンダーは淘汰されていくでしょう。先を見越して、真にパートナーとして信頼できるベンダーを選定されている企業が増えていると感じています。DX時代のテクノロジーパートナーを目指すシンプレクスは、グループ会社であるDeep Percept(ディープ パーセプト)、Xspear Consulting(クロスピア コンサルティング)とともに、ブロックチェーン技術の活用や事業会社向けのデジタル教育コンサルティングなど、多様なサービスを拡大、成長させていきます。


シンプレクスの今後の挑戦

まとめ

インフラを含めたクラウド上でのサービス提供や、システムの移行実績など、シンプレクスが培ってきた金融業界におけるノウハウは、SBI損保様の基幹システム移行プロジェクトの支援に大きく貢献しました。DX時代の基幹システムには、時代の変化に応じてスピーディに対応できる、拡張性・柔軟性が必須です。複雑化、ブラックボックス化したレガシーシステムを使い続けることは、企業生命を左右する大きなリスクになっています。「Simplex xInsurance」は、日本独自の商習慣に対応する、拡張性に優れた国産ソリューションとして提供しています。どうぞ、お気軽にご相談ください。

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シンプレクスはAWS パートナーネットワーク(APN)において、「AWS 金融サービスコンピテンシー」の認定を取得しています。

PROFILE

SBI損害保険株式会社
代表取締役社長
五十嵐 正明 氏
大学卒業後、外資・国内の生命・損害保険会社にて、経営企画、新規事業開発などの業務に従事したのち、独立・起業。2011年少短協会専務理事、2016年日本少短(現SBI日本少短)代表取締役、2017年SBI少短保険HD取締役(現任)を経て、2019年にSBI損保代表取締役社長に就任。2020年SBIインシュアランスグループ取締役(現任)、2021年一般社団法人日本金融サービス仲介業協会理事(現任)と、4足のわらじでグループを牽引する。
SBI損害保険株式会社
情報システム部 部長
齋藤 敏貴 氏
2017年 SBI損保入社
2018年 個人がん保険システム 開発責任者
2019年 団体保険システム 開発責任者
2020年 情報システム部 開発統括責任者
2020年 一般社団法人日本損害保険協会 情報システム委員会委員
2020年~ 基幹システム移行PJT責任者(団体保険・個人がん保険・火災保険)
シンプレクス株式会社
SBI保険グループ アカウントマネージャー
システムアーキテクト 
鏡 義弘
2010年シンプレクス新卒入社。証券・銀行業でインフラ・アプリエンジニアとして為替取引システムの構築・保守運用を多数経験。シンプレクスの保険・非金融事業立ち上げに伴う、多くの基幹システム構築・移行PJを歴任する。SBI保険グループのアカウントマネージャーとして、SBI生損保向けビジネス推進の役割を担うとともに、SBI損保向け基幹システム移行PJ責任者として任務を遂行中。
シンプレクス株式会社
保険事業責任者 DXコンサルタント
近藤 雅俊
2010年シンプレクス新卒入社。証券業界でアプリエンジニアとして証券取引システム構築・保守運用を多数経験。シンプレクスの保険事業立ち上げに伴い、多くの基幹システム構築・移行PJを歴任する。コンサルタントとして、金融業界のDX推進を歴任。保険事業責任者として生損保PJの導入責任を担う。
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