“誰もが「楽しみながら」生活できる経済社会を”といったコンセプトを掲げ、全世界100カ国以上、270万人を超えるユーザーを有する『PlayMining』は、世界初のPlay to Earn、トークンエコノミーとして、GameFi領域をリードする存在です。この『PlayMining』のプラットフォームシステムを手掛けるのが、シンプレクスです。なぜ、ゲーム業界とは縁がなかったシンプレクスに白羽の矢が立ったのでしょうか。そして、シンプレクスとの協力体制で『PlayMining』はどう進化するのでしょうか。プラットフォームシステムの開発に携わった関係者の話から紐解きました。
対談メンバー
- PlayMining Project
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CTO 並河 大地 氏
CMO 栗原 英誠 氏 - シンプレクス株式会社
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クロス・フロンティアディビジョン エグゼクティブプリンシパル 三浦 和夫
クロス・フロンティアディビジョン プリンシパル 井上 拓也
クロス・フロンティアディビジョン リード 栗田 遼太郎
ブロックチェーンを活用した新たな取り組み『GameFi』で社会貢献を目指す
さまざまな分野に応用され、存在感を示すブロックチェーン。ビットコインのような暗号資産や非代替性トークンであるNFTアートなどは有名ですが、今、注目を集めているのが『GameFi(ゲーミファイ)』や『P2E (Play to Earn)』です。GameFiとは、GameとFinanceを掛け合わせた造語で、暗号資産やNFTを活用することで、ゲーム内で得た通貨やアイテムなどを現実世界に移して、経済的価値を生み出す仕組みを指します。そして、GameFiによって実際に経済的利益を得られるゲームがP2Eと呼ばれています。『PlayMining』は、このGameFiとP2Eのプラットフォームです。
「現在、『PlayMining』では、6 つのゲーム(P2E)がプレイ可能。ユーザーのみなさんはゲームを楽しみながら、『PlayMining』が発行する暗号資産『DEAPcoin』を稼げます」と説明するのは、『PlayMining』の開発や運営を手掛ける『PlayMining Project』のCMO(最高マーケティング責任者)、栗原 英誠氏(以下栗原氏)。『PlayMining』が目指す世界をこのように語ります。
「スーツを着てオフィスで働く行為とお金を払ってゲームで遊ぶ行為。現在、このふたつは大きく分断された世界観です。しかし、『PlayMining』は、『DEAPcoin』というトークンインセンティブがあることで、ゲームを通じたユーザーの行動変容、いわゆるゲーミフィケーションが可能です。このゲーミフィケーションを社会課題に当てはめて、遊ぶことで社会に貢献し、報酬も得られるといった、遊びと仕事の境界が曖昧になる“新しいエンタメ”を目指しています」(栗原氏)
“新しいエンタメ”を標榜する『PlayMining』。その具体的な例が、Greenway Grid Global、東京電力パワーグリッドとの取り組みです。現実社会で電柱を撮影して陣取りするようなゲーム、『ぼくとわたしの電柱合戦~電柱ガールと鉄塔ボーイ(タイトル仮)』を開発中で、プレイ内容によって『DEAPcoin』や『鉄塔・電柱カード』といった電力アセットNFTを付与。ユーザーはゲームを楽しみ、東京電力パワーグリッドは、撮影された写真から、インフラ設備の保守や設備異常を早期発見。Win-Winの関係で、ゲームで遊びながら社会貢献に寄与し、収入も得ることができます。
「現在、『PlayMining』には、全世界100カ国以上、270万人を超えるユーザーがいます。ゲーミフィケーションとトークンインセンティブを掛け合わせて、『PlayMining』のゲームを楽しむことで外部にも付加価値をもたらす。こういった事例をGreenway Grid Global様、東京電力パワーグリッド様以外のさまざまな企業とも組んで実現したいですね」と栗原氏は意気込みます。
その『PlayMining』のプラットフォームシステムの開発、運用保守を担うのが、シンプレクスです。
突貫工事で作った初代のプラットフォームシステムを宮大工が作り直すプロジェクト
「実は、今回、シンプレクスさんに依頼したプラットフォームシステムは、初代の作り替えです。我々は『リビルドプロジェクト』と呼んでいました」と語るのは、『PlayMining Project』のCTO(最高技術責任者)を務める並河 大地氏(以下、並河氏)。
「『PlayMining』がサービスを開始したのは2020年4月。当時はNFTという言葉も浸透しておらず、暗号資産やNFTを活用したゲームという概念が出始めた頃。プラットフォームシステムを構築しようとしても、受けてもらえる企業は多くありませんでした。そもそも、『PlayMining』自体が成功するかどうかも分からない。そこで、PoC(概念実証)のような形で、短期間、最低限のマイクロサービスを目標に、あえて速度・効率優先で突貫工事的に開発したのが、初代のプラットフォームシステムでした」(並河氏)
ところが、サービスイン後、世の中の盛り上がりに上手く乗れたこともあり、『PlayMining』のユーザーとゲームタイトルは加速度的に増えていきました。当然、プラットフォームシステムにも大きな負荷がかかります。並河氏の言葉を借りれば「突貫工事で作った土台に限界がきた」とのことでした。
「速度が遅い・使いづらい、などのUX解消や、万が一にもデータ自体が飛んでしまわないような対策を打つ必要がありました。また今後ユーザーが何百万人に増えても問題なくユーザーに楽しんでいただくために、腰を据えて、突貫工事ではなく、“宮大工”に頼んで、しっかりとしたプラットフォームシステムを一から構築することにしました。」(並河氏)
その宮大工として選ばれたシンプレクス。「きっかけは、偶然でした。」と語ったのは、シンプレクスでweb3事業に携わる井上拓也(以下、井上)。
「『PlayMining Project』のエンジニアとシンプレクスのエンジニアが、プライベートで友達だったのです。『PlayMining Project』のエンジニアが、開発先を探す苦労を口にしたところ、うちのエンジニアがシンプレクスにブロックチェーン関連のチームがあることを話して、一度、顔合わせをすることになりました」(井上)
「金融機関の暗号資産システムも手掛けているとのことで、是非、お会いしたいとお願いしました。とはいえ、最終的な決定では、IT企業10社程度から提案をもらい、金額や技術力、スケーラビリティなど全般に点数を付けた結果、シンプレクスが圧倒的に強かった。そこは友達、関係なしです(笑)」(並河氏)
リビルドするプラットフォームシステムは、『PlayMining』のユーザー管理やゲーム内でやり取りする『DEAPcoin』『NFT』の発行・管理、そして、ゲームやアイテムを配信するマーケットプレイスの動作などに関わる、まさに土台の部分です。シンプレクスは、暗号資産黎明期から大手証券会社向けのシステム開発や性能向上に携わっており、ブロックチェーンへの知見も深い。それでも「チャレンジングな取り組みだった」と井上は語ります。
「ゲーム領域はシンプレクスとしても初挑戦。NFTのマーケットプレイス開発も実績がありません。弊社が持っているさまざまな技術をかけ合わせるという意味では、新しいチャレンジでした」(井上)
それゆえ、開発体制も普段以上に、『PlayMining Project』とシンプレクスの密な関係が求められました。『リビルトプロジェクト』のプロジェクトマネージャーとしてフロントに立った、シンプレクスの栗田遼太郎(以下、栗田)は、「1週間毎に方向性を確認して、プランニングをし直しながら、小刻みに進めました」と振り返ります。
シンプレクスのweb3領域のエンジニアで、『リビルドプロジェクト』における提案を担った三浦和夫(以下、三浦)も、「一般論ですが、受注側はある程度、上手く進んでいる状況を整えてお客さまに報告したいものです。しかし、今回は開発が滞ってスピードが出なかったときも正直に報告するなど、フルオープンで向き合っていた印象です」と苦笑。
「印象に残っているのは、現場のファイルを同じドライブで共有して、開発中の状態をリアルタイムで確認しながら意見を交換したこと。普通、発注側は納品されたものだけを見ますよね。シンプレクスは大手ですが、ベンチャー企業並のスピード感で対応してくれました」(並河氏)
これが可能だったのも、クライアントと直接取引を行うプライム受注を徹底し、下請けへの丸投げも行わない企業文化があるからです。
進化し続け得る『PlayMining』を止めず、ユーザーに気付かれずに移行を終える難しさ
チャレンジングな取り組みとなった『リビルドプロジェクト』。そのなかでも最大の難関は、初代のプラットフォームシステムで稼働する『PlayMining』サービスを停滞させずに新システムへと移行することでした。三浦は、その難しさをこう語ります。
「暗号資産やNFTといった要素的な難しさは、もちろんありました。しかし、それ以上に課題だったのは、常に『PlayMining』で遊んでいるユーザーさんに全く意識されることなく、新しいプラットフォームシステムに移行させることです。つまり、システムの裏側はそっくりすり替えながらも、ユーザーさんから見える機能には違いを出してはいけないということ。ゼロから作る方が余程、簡単だと思いました」(三浦)
シンプレクスはこれまでに、金融機関を始めとしてさまざまなプロジェクトでシステム移行を実施してきました。実際、今回もそれらのナレッジを活かすことができたといいます。それでも、『リビルドプロジェクト』は特別にハードルが高かったのはなぜでしょうか。それは、『PlayMining』の進化の速さにありました。
「我々が開発を進めている間にも、新たなサービスが始まり初代のプラットフォームシステムに実装される。その進化に対応しながら、新しいプラットフォームシステムを開発するのが、最も難しいポイントでした。ゴールラインが先へ先へと逃げていく感覚です」(栗田)
栗原氏は心苦しい表情を浮かべつつ、「GameFiとP2Eはホットな市場、常に新しい仕組みが生まれるので、それを反映させなければ、我々も生き残れない状況でした」と状況を振り返ります。
それでも、シンプレクスがやり遂げられたのは、エンジニア全員が、『PlayMining』という新しい価値を生み出す仕組みに共感し、強い思いを持っていたからです。
「お客さまの立場に立って、開発を自分事として捉え、やり遂げる。これはシンプレクスの文化ですね」(栗田)
もちろん、思いは重要だが、それだけでは実現できなかったでしょう。
「早くからブロックチェーンに携わり、さまざまなシステム開発を手掛けていたので、扱い方を正しく理解しているのも強みでした。『PlayMining Project』様とも認識の齟齬がなく、再設計のスタートダッシュを切ることができました」(三浦)
また、『PlayMining』内でNFTや『DEAPcoin』をやり取りするウォレットは、金融機関などの暗号資産のウォレット開発で培った知見を転用できたことも大きかったといいます。
『5DNA』にある『クライアントファースト』で、ワンチームの開発ができた
かくして、無事、移行を遂げた『PlayMining』の新しいプラットフォームシステム。
並河氏は「これまで、裏側の話をしたことはありませんでしたが、こういった強い土台の上で『PlayMining』は動いており、新しいサービスの開発が進んでいることを知ってほしいです。」と語ります。
「僕らも無茶なお願いをしていることは分かっていました。それでも、シンプレクスさんは、柔軟に受け止めて提案してくれる。それもあって、『PlayMining Project』とシンプレクスは、ワンチームで動けました。その根底には、人格があると思っています。チームで動くには、結局、それに尽きる。心理的安全性が保たれていて、お互い、建設的な意見を交わせる。とはいえ、それは正直、理想論。私自身、これまでの開発では、あまり経験したことがありませんでした。どうしてもクライアントに忖度したり、トラブルが起きないように無難な範囲で収めたりしようとするからです。しかし、今回は透明性も高く、互いに良いものを作り上げようといった強い意思で進めることができました。これは、みなさんの人格だと思っています」(並河氏)
この言葉に井上は、「シンプレクスが最も大事にする『5DNA』のひとつに『クライアントファースト』があります。これは、単なるお客さま第一主義ではなく、お客様の期待を超えるために一人一人が行動を選ぶという考え方です。今回、その部分を評価して頂けたのは嬉しいことですね」と応えました。
では、シンプレクスとして、得たものはなんだったのでしょうか。
三浦は、「web3業界で一定の規模感のある『PlayMining Project』様と一緒にやれたこと自体が、大きな成果です。これまで、シンプレクスが関わっていなかったゲーム分野で、満足して頂ける結果を出せたことは、社内的にも、社外に対しても、今後、影響を与えると思います」と語ります。
そして栗田は、「エンジニアとして、新しい領域にこれまでない技術でチャレンジできたのは、いい経験でした。技術的な苦しみや悩みも成長につながったので、これからが楽しみです」と続けました。
『PlayMining Project』とシンプレクスの共創で日本のweb3領域を拡大させる
栗田が「これからが楽しみ」と話したように、『リビルドプロジェクト』には続きがあります。まずは、しっかりとした運用保守です。
「技術力が高いので、そもそもエラーが少ない。もちろん、移行直後はどうしてもトラブルが起こりますが、そのときには深夜でもすぐに連絡が上がってきて、複数の対応策を提示してくれる。担当者の責任感が伝わってきます」と高い信頼を寄せてくださる並河氏に、
井上は、「FXや暗号資産の取引システムの運用保守に携わってきたシンプレクスの強みをそのまま活かすことができました。今回は、その金融機関水準の運用保守の体制を採用しています」と語りました。
「システムアラートが出た場合、ユーザーに影響がでる可能性があるので、まずは速報として『PlayMining Project』様にエスカレーションしています。ただ、運用を重ねた結果、ユーザーへの影響も見極められるようになってきたので、連絡頻度などを含めて、より効率的な運用体制に改善しています」(栗田)
そして、今後は、より積極的な関与により、責任範囲も広がっていく予定です。元々、『リビルトプロジェクト』では、スケーラビリティが重要視されていました。今後、『PlayMining』のプラットフォームシステムには、さまざまな新サービスが搭載される予定で、シンプレクスは、この新サービス開発にも手を挙げています。シンプレクスの3人は、「社会課題を解決するようなコンテンツそのものを作る」と意気込みを持っています。
「前述のGreenway Grid Global様、東京電力パワーグリッド様と共同で取り組む、『ぼくとわたしの電柱合戦~電柱ガールと鉄塔ボーイ(タイトル仮)』のアプリは、シンプレクスが作っています。今後も、色々なコンテンツの開発に携わりたいと思っています。もちろん、我々がゼロイチで提案するのは難しいのですが、『PlayMining Project』様のアイデアに、シンプレクスの技術でどういった味付けができるかなどを考えて、一緒に次のステージに進めれば嬉しいです」(栗田)
栗原氏は、シンプレクスの更なる関与を受けて、『PlayMining』のこれからをこのように見据えています。
「社会課題は多岐に渡ります。Greenway Grid Global様、東京電力パワーグリッド様の案件は、ジャンルでいえばインフラ。これ以外にも、災害や環境問題など、枚挙に暇がありません。さまざまな企業様からのお問い合わせも増えているので、Greenway Grid Global様、東京電力パワーグリッド様との取り組みをリード案件としながら、より大きな領域で複数の企画を手掛けていきます。そういった展開も、強固なプラットフォームシステムがあってこそ可能になるもの。今後も、このプラットフォームシステムのうえに、さまざまなコンテンツやサービスをシンプレクスさんと一緒に展開していきたいと思っています」(栗原氏)
金融領域に強みを持つシンプレクスですが、早くからブロックチェーン技術を手掛け、暗号資産のシステムやウォレットを開発するなど、web3にも深い知見を持っています。
井上は「本格的にweb3領域での事業を拡大するのはこれからです」と意気込みます。
「今後、『PlayMining Project』様と一緒に手掛ける案件は、そのままシンプレクスの実績になっていきます。当然、『PlayMining Project』様がweb3領域のトップランナーになれば、我々の存在感を増すでしょう。引いては、web3領域のビジネス自体が、日本でも一気に広がるきっかけになると思っています。そのためにも、お互いにタッグを組んでしっかり盛り上げていくのが、これからの目標です」(井上)
金融領域でも、シンプレクスが最初から存在感を持っていたわけではありません。FinTechという言葉がない時代に、いち早く金融にITを持ち込んだり、ブロックチェーン黎明期に証券会社と共に暗号資産に取り組んだりしたチャレンジングスピリッツが、今の地位を築いてきたのです。そういった意味では、web3への挑戦も必然と考えています。『PlayMining Project』とシンプレクスの共創は、web3領域に足跡を残す大きな一歩となるでしょう。
PROFILE
CTO
他にもアイドルの運営や水中ドローンを遠隔操縦可能なVRアプリケーション開発など、エンターテインメントとITを融合させた多くのサービスの企画開発を実施。
2022年より当プロジェクトに参画。CTOとしてプラットフォーム事業の技術統括のほか、複数の新規事業の推進、人事総務労務部長も兼任。
鹿児島大学理工学研究科天文学専攻修了、東京大学大学院先端学際工学専攻満期退学
CMO
クロス・フロンティアディビジョン
エグゼクティブプリンシパル
クロス・フロンティアディビジョン
プリンシパル
その後、暗号資産向けウォレットのR&D/導入をリードし、現在は暗号資産/STO/NFTを中心としたweb3領域のエンジニア組織を統括。
クロス・フロンティアディビジョン
リード
その後、暗号資産販売所システム導入のプロジェクトマネージャーを歴任。
現在ではweb3領域のシステム導入から運用保守のプロジェクトマネージャーを担当。